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連載 コースを知る。

2番 Short PAR4  ホール名 「Atmosphere」

Black 348ヤード Blue Members Tee 303ヤード

White 290ヤード Green Forward Tee 238ヤード



 

ドライバブルホールを学ぼう。

 

ジャック・ニクラウス設計チームの作品はプライベート、パブリック問わず、アベレージゴルファーでも楽しめるスターティングホールのアイデアを持ち出しています。そして次の2番になるとパブリックでは1番同様にバーディトライも可能なホールを演出しますが、プライベートだと攻略法を考えさせる戦略性を持ったホールを登場させたりします。これが彼らの特徴かも知れません。Tokyo Classicの2番はバックティから348ヤード、ブルーティでは303ヤードの所謂距離の短い「ショート・パー4」です。ストレートに見えるホールでも左右のバンカーの配置でIP付近が左に流れそして右に流れるフェアウェイルートになっています。ロングヒッターはドローボールで左サイドからグリーンを縦気味に取る攻略法を考えるでしょう。フェードヒッターは2ndのアプローチで得意な番手が使える安全ルートを選択されるかも知れません。しかしどちらも一つ間違えればバンカーに捕まり、パーセーブすら困難な事態になる危険性を持っています。しかしこのホールの最大の愉しみは、コースセッティングによってその設計の妙味が大きく変わる事です。それはトーナメント時におけるヤーデージのセッティングです。例えばブルー又はホワイトティーを使用した場合、飛ばし屋はドライバブルホールとみて1オンに挑戦するでしょう。ハードフェードが要求され、トーナメントの流れからイーグルならばバーディ、バーディならばパー、バンカーに捕まり仮にパーセーブ出来たとしてもそれはボギーに等しい結果となります。更にホワイトまたはグリーンのフォワードティを活用してショートパー4をロングパー3に変更するアイデアも生まれるはずです。Tokyo Classicはトータルパー72のコースですから、トーナメントではパー71, 70でコースセッティングするのは今日のトーナメントの状況では当たり前の事です。ショートパー4はトーナメントでは様々な生かし方が生まれるはずです。ホール名称の「Atmosphere」は帝王ニクラウスが創り出した挑戦への様々な空間という意味を持って名付けています。





 

ハーフパーホールについて学ぼう

 

今年初頭に連載 GOLF Atmosphereの中でハーフパーホールについて解説させて頂きました。理論的にその概念は単純です。バーディーチャンスのあるホール、またはボギーが必ずしも悪い結果ではない、パーに等しいと判断されるホールは、「ハーフパーホール」の定義を満たしていると言えます。つまりそれはアベレージゴルファーがスクラッチゴルファーレベルのプレーヤーにマッチゲームで対抗できるホールの事を指します。改めて解説を致しましょう。Tokyo Classicの2番を例にするならば、アベレージゴルファーとスクラッチゴルファーが同じティから対抗した場合、距離のない短いパー4ならばスクラッチゴルファーはティショットでよりグリーンの近くに打球を運びアドバンテージを取る手段にでるでしょう。しかし飛距離にハンデがあるアベレージゴルファーならば、2打目に自信が持てるクラブを使える距離を残し、ステディにフェアウェイを捉えるティショットを心がけるでしょう。つまり距離の短いホールだからこそ出来る賢者の判断です。

コース研究家たちに興味を持たすホールとは、パーにおける相対距離に対してゴルファーの先入観が当てはまらないものが多いものです。 例えば距離のあるロングパー3のように従来の許容範囲を超えたレングスは、挑戦欲の高いスクラッチゴルファーにとって魅力的なオプションを提供します。彼らが245 ヤードのパー 3 や 285 ヤードのパー 4 を「パー3 1/2 ホール」と呼ぶことがあります。距離のあるロングパー3でボギーを叩いてもそれにうなずき自らを納得させるのに対し、距離の短いショートパー4ではパーで上がっても満足せず首を横に振り次のティーに向かいます。スクラッチゴルファーがいかにパーの定義に拘るかが理解できる光景です。

しかしアベレージゴルファーが自らの飛距離や技術を謙虚に捉え、攻略ルートを整えられるホールであるならば、グリーン上でドローに持ち込める可能性は十分にあるはずです。これがハーフパーホールにおける設計の定義です。つまりこの場合のハーフ(Half)は引き分けることを意味します。

カリフォルニアの名門Cypress Point GCの16番、クリフ超えのロングパー3は、グリーンセンターまでが230ヤード、クリフ超えには205ヤードのキャリーが必要です。 スクラッチゴルファーはその日の風によりその攻略法を変えますが、アベレージゴルファーの大半はキャディからグリーン左側のフェアウェイに向け160から175 ヤードのショットを打つ事を奨められます。つまり2オン1パットの「オールドマンパー」の精神を持った攻略ルートです。このホールなどアベレージゴルファーがスクラッチゴルファーに勝てる可能性を持たせようとした設計家側からの戦略性とプレーヤーの攻略法が見事に一致したハーフパーホールと言えるでしょう。


※Cypress Point GC #16 Long PAR3の攻略ルート

古典的リンクスにはタフなグリーンを持つパー 4 があります。例えば 皆さま方も全英オープンでよくご存知のSt Andrews Old コースの17番Road 470〜495ヤード、Prestwick GCの13番Sea Hardrig 458ヤード, Royal Dornochの14番Foxy 445ヤード、Westward Ho! (Royal North Devon)の9番Dell 451ヤードなどは開設当時パー5としてボギースコアカードで表示されていた時代からのホールです。ここで是非注意して頂きたい点はPARというゴルフ用語は、5世紀以上にわたる長いゴルフ史から見た場合、ゲームが進化していく中、比較的新しく追加された用語であることです。 古典的なスコットランドのリンクスはプレーヤーにストローク数のゼロを定義する数字PARを課すことを目的として造られた舞台ではありません。事実、マッチプレーがゴルフゲームの形式とされ、20 世紀はじめにゲームがストローク制に経るまではボギースコアカードが一般的に使用されていました。コースも6から9, 12ホールと拡張され、そして18 ホール構成が主流の時代へと繋がっていきます。Prestwickや内陸のSwinley Forestでは現在でもボギースコアカードが存在しています。その歴史的観点から攻略ルートはパーオンを考えず、ピンへの花道となるアプローチエリアにレイアップし、3オン1パットのルートを選択するのが賢者の道と言われています。これは距離ではなく、グリーンの形状と配置バランス、表面のコントゥーア(Contour)がボギースコアに相応しいよう厳密に設計されているからです。距離が出るスクラッチゴルファーでさえこの賢者の道を選択するでしょう。そして2打目にレイアップできる箇所がはっきりと分かるように設計、コースセッテイングされているのがポイントです。これなどまさにハーフパーホールの戦略的名ホール達です。


※St.Andrews Old #17 Road Hole Photo credit by R&A

プロトタイプのハーフパーホールではバンカリング(バンカーの配置)に設計の妙味が感じられるはずです。ゴルフは1ホールで2 度のグッドショットを要求すればすべてのホールでパーを達成できる可能性を示します。これらのようなホールには、アプローチでグリーンの手前、40 ヤードから 60 ヤード地点にバンカーを持つのが良いと考えられています。 バンカーはショートヒッターにグリーンに近づくべきか、それとも後ろに下がってサードショットでグリーンを狙うべきかを考えさせます。そしてグリーン及びその手前をターゲットにしたスクラッチゴルファーには、ミスをした場合、彼らが直面する最も難しいショットとなるロングバンカーショットの罰が提供できます。ハーフパーホールの風潮は何も新しいことではありません。 かつてAlister Mackenzieは常にそれらを一番考案し、18ホールにいくつも組み込ませていました。Pete Dye も同様でした。現在ではTom Doak, Bill Cooreがそれを継承しています。 現在のゴルフコースレイター(評議者)達はゴルフの腕前が全員良いとは限りません。ゴルフコース研究家、ゴルフ史家たちには、時間の自由と資金力を持つベテランの年齢層が多く含まれているからです。彼らの中にロングヒッターは何パーセントいるでしょうか? かつてはロングヒッターで鳴らしたスクラッチクラスの腕前も歳を重ねる事に飛距離は落ちるが新たな攻略ルートを見出した時、その戦略性が理解できるものです。それを伝えてくれるのがハーフパーホールなのです。



 

ヤーデージの長さによるハーフパーホールの表示

 

ハーフパーホールのPAR表示はそのヤーデージによって示されます。例えば今年全英が開催されるRoyal Troon GC Oldの8番は僅か123ヤードのショートパー3です。距離は短くとも全英のRotaコースで最も小さなグリーンは、風が吹けば打球はバンカーに転がり落ちボギーも余儀なくされる事から「ポステージスタンプ」の名が付けられた名物ホールです。距離はなくともそのグリーンのサイズからアベレージゴルファーにも時に勝てるチャンスを与えてくれるハーフパーホールです。又、C.B.Macdonaldがクラシック設計のテンプレートホールの一つに定義した名称「Short」のパー3は、距離は135ヤードでグリーンのサイズもクラシック時代の作品では比較的大きいが、グリーン面のセンターにThumbprint(母印)と呼ばれる親指で押しつぶしたような円形の歪みを持ち、グリーンに乗って当たり前、問題はパッティングにおける技術を唱えたパー3理論です。これもスクラッチゴルファーとイーブンに持ち込めるホールです。これらのPAR3は距離の短さから2.5と表記され、Cypress Pointの16番のように距離が長く2オン+1パット=パーセーブの攻略理論を持ったパー3は3.5と表記されます。この表記はパー4では距離が短いショートパー4は3.5, St Andrews Oldコースの17番ロードホールのようなロングパー4ならば4.5と記されます。パー5では短いショートパー5は4.5と表記されます。


さてハーフパーホール、ご理解頂けたでしょうか? Tokyo Classicでは6番のBottleホールもそれに属するシグネチャーホールの一つでしょう。


Text by Masa Nishijima

Photo by Tokyo Classic Club, GOLF, R&A

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